松野貴則の映画日記

映画のレビューブログです。僕個人の独断と偏見にまみれた作品紹介をしていきます! *ネタバレ注意*

まあだだよ☆☆☆☆☆

 

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まあだだよ

 

監督 黒澤明 

脚本 黒澤明

出演 松村達雄 香川京子 井川比佐志 所ジョージ 油井昌由樹 寺尾聰  

 

公開 1993年4月17日

 

【ストーリー】

内田百閒の自伝映画。

法政大学の教師を退任した百閒のもとには、多くの門下生が彼を慕い集まってくる。

ある日先生の還暦パーティーを開催している最中に大空襲で家が焼失してしまう。

先生は焼け残った小さな家に住むことを

余儀なくされるが、門下生たちが池のある家を建てることを申し出る。

そうして新しい家には野良猫のノラが居つくようになり、先生はたいそう喜んでいた。

ある日ノラが行方知れずになると、

先生は寂しさで神経が衰弱していく。

門下生たちはビラ配りをするなど奔走するが

結局見つかることはなかった。

黒縁の野良猫が家に来るようになると、

先生はその子を可愛がるようになる。

喜寿を盛大に祝う

第十七回摩阿陀会(まあだかい)の最中、

先生は不整脈をおこし、

門下生に連れられて自宅に戻ってしまう。

大事を取って眠っていると、

幼少期の頃の夢を見る。

まあだかい?と言う友人の掛け声に

まあだだよと返す。

黄昏時の夕暮れがただ美しく光っていた。

 

【感想】

黒澤映画にあるような、

壮大なアクションや物語展開はなく、

戦前から戦後の先生と門下生たちの静かで温かい日常を描いた作品。

ウィットに富んだ先生のお話し一つ一つに門下生たちは大笑いして、

役を演じているのが信じられないほどに、

先生への愛が感じられる。

今では忘れられてしまっている

人と人との繋がり、優しさが

随所に散りばめられていて

観終わった後、不思議と遠い昔の大切な人に

会いたくなります。

 

僕個人としては

ジブリの「紅の豚」を観たあとのような

感じで黒澤映画の中でも一番好きな作品!

 

実はこの映画、所ジョージさんが重要な門下生の一人として出ているのですが、

所さんらしいお芝居で、ものすごく良い!!

黒澤監督も所さんの起用に関して

「役者じゃないから」と言っていたそうで。

作品に出てくる猫と同じように、

役者の型にハマらない素の状態が

この作品をより一層リアリティにしています!!

 

このお話の主人公内田百閒という人は実在する作家です。

夏目漱石の門下生で、

芥川龍之介高峰秀子などが好んで読んでいたようです。

これを機に内田百閒の小説も読んでみるのも良いんじゃないでしょうか?