松野貴則の映画日記

映画のレビューブログです。僕個人の独断と偏見にまみれた作品紹介をしていきます! *ネタバレ注意*

お茶漬けの味 ☆☆☆☆

 

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「お茶漬けの味」

 

監督 小津安二郎

脚本 小津安二郎 野田高悟

出演 佐分利信 木暮実千代 鶴田浩二 笠智衆 淡島千景 津島恵子

   三宅邦子 柳永二郎 十朱久雄 望月優子

 公開 1952年10月1日

 

【ストーリー】

佐竹茂吉は質素な生活を好む

エリート会社員。

しかし妻の妙子はそんな暮らしに

嫌気が差し、

茂吉のことを「鈍感さん」などと

揶揄していた。

茂吉は妙子のそんな姿を知ってはいたが、

何も言わず夫婦生活を続けている。

ある日、姪の節子はお見合いをすっぽかし、茂吉と遊んでしまう。

そのことが妙子に知られたことで

夫婦仲は悪化。

妙子は茂吉に黙って家を出てしまう。

ちょうどそのタイミングで

茂吉のウルグアイへの出張が急に決まる。

茂吉は妙子にすぐに帰るよう電報を打つが、

妙子が戻るのは茂吉が旅立った後であった。

妙子が一人家にいると、

ウルグアイに飛び立ったはずの

茂吉が帰ってくる。

飛行機の故障で、引き返してきたのだ。

小腹を空かせた二人は

お茶漬けをすすりながら、

お互いの胸中の想いを吐露し、

妙子は二人でお茶漬けをすする様な、

ありふれているが、かけがえのない幸せに

気づき、涙する。

 

【感想】

夫婦間のすれ違いはいつの時代も似たような感じなんだなぁと。

ブルジョア気質の妻と

質素な暮らしを好む夫という構図は

永遠のテーマなのかしらと思いながら、

自分の家庭をついつい振り返ってしまう。

結婚している人なら、時代を超えて共感してしまう作品!!

夫目線で一つ救いなのは

 

質素な暮らしがいかに幸せか妻が気づいた点

 

理想的な展開ですねぇ。。。

 

あ、べつに我が家に何かあるというわけではありません!!

 

うちの妻もどちらかと言えば、倹約家だと思います!!!

 

誤解が無いように一応!!!

 

 

さてさてこの映画のエピソードに移ります!

このシナリオ自体は戦前に書き上げられていたそうです。

その時のタイトルが「彼氏南京へ行く」

内容は簡単に書くとこんな感じ。

 

ブルジョアの奥様方が夫をほったらかして

旅行に行っている最中、応召(軍隊として招集されること)されるという電報が入り、

すぐに帰宅すると、亭主は何事もないかのように家で寝ている。

妻はその姿に亭主の頼もしさを

改めて痛感する。

 

このシナリオは当時の映画法の検閲に引っかかり、ボツになります。

反戦のニュアンスはないのに、

戦時中に女が遊び歩くというのが

イケなかったようです。

この事実は当時の映画人に

だいぶショックを与えました。

 

小津と脚本家の野田高悟が戦後、

このシナリオを引っ張り出して、

時代背景を戦前から戦後に移し替えて

映画化にこぎつけたのが

「お茶漬けの味」になります。

小津安二郎は後にこの映画について、

こんなことを言っています。

 

「ぼくは女の眼から見た男、顔形がどうだとか、趣味がいいとか言う以外に、男には男の良さがあるということを出したかった。しかしあまり出来のいい作品ではなかった。」

 

引用元「小津安二郎 自作を語る」(キネマ旬報別冊 小津安二郎 人と芸術 1964年2月増刊号)

 

男の良さとは、おそらく

頼もしさなんでしょうね。

僕には微塵もありません(笑)

 

小津ファンであれば、

名作の一つに選ぶ人も多い作品。

日常生活の描き方には普遍性を感じます。

 

元は他人同士である夫婦のすれ違い。

 

質素倹約な夫婦生活の中にある、

かけがえのない幸せ。

 

映画自体は個人的な架空のお話であるにも関わらず、普遍的な不朽の名作です!

 

結婚してから見ると身に染みるなぁ。。。

 

【好きなセリフ】

お茶漬けの味なんだ。夫婦はこのお茶漬けの味なんだよ。

 

しかし、パチンコもちょいと病み付きになるね。

つまりなんだな大勢の中にいながら、安直に無我の境にはいれる。

簡単に自分ひとりっきりになれる。

そこにあるものは自分と玉だけだ。

世の中の一切の煩わしさから離れてパチンとやる。

玉が自分だ。自分が玉だ。

純粋の孤独だよ。そこに魅力があるんだな。 

幸福な孤独感だ。